介護の仕事は、心身が弱った高齢者のケアを行うという特徴がある。身体が不自由な高齢者に対していたわりの気持ちを持つことは、難しくないだろう。また、脳梗塞や認知症などで記憶障害や問題行動に陥る高齢者に対しても、介護職としてホスピタリティマナーを身につけることが必要だ。
時には錯乱状態になって、介護職への加害行為に至る高齢者もいるかもしれない。こうした状況でも冷静さを失わず、常に相手の人格を尊重する気持ちを忘れてはいけない。介護職の顔や名前を認識できないほど錯乱している高齢者も、時々正常な意識が戻り自分の行動に愕然とすることがある。介護職がこうした意識の回復に気付いて優しい声かけができれば、信頼関係を築けるだろう。
高齢者がどんな異常行動を取ろうとも、時には意識を取り戻す可能性を考慮し、無礼な態度は慎まなければならない。相手の意識が戻らなくても、それとは関係なく高齢者に対する一定の礼節を忘れてはならないのだ。短期記憶機能が低下し、つい先程話したばかりの事も忘れてしまう高齢者も多い。こうした場面でも決して忘却について触れず、初めて言及するかのように振る舞う態度も必要で、忘れたことを指摘する必要はない。
介護職員は、目の前にいる高齢者と未来の自分の姿と重ねて、未来の自分が受けたいと思うホスピタリティを施せるよう心がける必要がある。最も大切なことは、高齢者のプライドを傷付けないよう配慮することだ。知的障害により幼子のように振る舞う高齢者であっても、長い人生を生きてきた成人としての誇りがあることを意識しなければならない。